苦節50年の考察
些か怖い話になる。
それは近代に於いては「橅」、古くは「山毛欅」という漢字が当てられていた。
これらの字を見て、即座に「ブナ」と読み下した諸兄には先ず拍手を送りたい。
重量が重く、腐朽しやすい為、建築材としてあまり用途が無かったので、「木」へんに「無」という不名誉な字が当てれれてしまったようだ。
これがカタカナで「ブナ」と表記されだした頃、白神山地のブナ原生林が「ユネスコ世界自然遺産」に登録されたものだから、ブナを取り巻く世間の目は一変する。
幼少期の不遇をスネて世を儚んでいた女性(21歳)が、銀座で「源氏名」を得て、突如輝き出したようなものである。
・・・・ん、違ったかなぁ? (´Д`)
ブナの成長は遅い。
広葉樹林の中で細々と40年、目立たず、誰に後ろ指をさされるでも無く、静かにその時を伺う・・・。
ところが40年を過ぎた頃から、広範囲に張り巡らされた「根」から、少しずつ「毒素」を排出するようになる。
周りの木々が毒により、徐々に体力を奪われ枯れ始めた途端に、今までひっそりと生きていたはずのブナが突然「牙を剝く」のである。
一気に成長を加速させたブナは、やがて直径2m、高さ30mの巨木となり、50年の歳月を経てようやく成人し「実」を付けるのだ
苦節50年・・・密かに毒を仕込み、虎視眈々と覇権を狙う様は、まさに森林界の「毒婦」といえよう。
楚々とした妙齢のご婦人の「裏の顔」を見た思いである。
あぁぁぁ、怖い怖い! (>_<)
今日の幸せ
「ブナ林に水筒はいらない」という言葉がある。
葉の微妙な凹凸とウブ毛、密生した枝葉を誇るブナには、降雨量の85%を受け止める力があるのだ。
一本のブナの木は、なんと「8トン」もの水を貯えるという。
また、人間が生きて行く為には、肺に溜まった「二酸化炭素」を捨て、新鮮な「酸素」を取り込む必要が有る。
その量たるや日に500㍑。年間約100kgにも及ぶ。
ところがブナの成木一本で「一家4人分の酸素必要量」を充たしてくれるのだ。
それも条件さえ良ければ、1000年の長きに渡って継続されるというのだから、唯々敬服するしかない。
そ、そうだったのか!
いま、痛いほどに膝を打ち、己が不明を恥じる。
私としたことが「表裏の顔」を見間違えてしまった。
あなたは辛い世を生き抜くために「悪女」を装ってはいたが、その実、匿名で寄付を続けるような「慈善家」だった。
私の目は曇っていた。
役に立たない目玉なら、くり抜いて銀紙でも貼っておくしかない。(● ●)
人は往々にして目に見えるものに惑わされてしまうものだ。
「真理は目に見えないものの中に有る」ことを、今更ながらに思い知らされるのであった。
まだ雪残る早春の黒い山肌を、他の木々に先駆けて新緑に染めるブナの巨木。
その、背筋の伸びた凛とした立ち姿に、汚れ無き「表の顔」を見た💛
我々が鼻を膨らませ、新鮮な空気を吸えるのも、あなた達のお陰です。
ホントにホントに、ありがとう。