ささやかな幸せを求めて

旅と食と読書を通して人生のハッピーを追求しています。

ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジの無念

ブラックヒーローの考察


「黒」には不思議な魅力がある。


それは自ら輝きを放つ光の魅力では無く、全ての光を呑込む「ダークサイド」の魅力と言っていいのだろう・・・。


我が日本にも、遠くは泥棒界の大立者「石川五右衛門」から始まり、幕末では「新選組」、近世では政界に於ける「田中角栄」に至るまで、数は少ないが「黒い人気者」がいた。

f:id:kanehiro-sakae:20210603172536j:plain
正義の「光」とダークサイドの「闇」は事物の表裏である


此処でブラックヒーローを語るには、先ず「定義」しなければならないが、これには厳しい「3条件」が付される。


①.先ずは他を寄せ付けない程の「圧倒的な力」が有る事だろう。

②.次に「恐い、若しくは悪党面」である事。

③.最後に「人気が有る」事。


私の場合はこの3条件の全てが無い。(ーー;)
従ってブラックヒーローではなく、唯のオジサン(50才)ということになる。


・条件の①が欠けると
「弱い、三枚目、人気がある」 → これはお笑い系はこのカテゴリーか・・。


・条件の②が欠けると
「強くて、カッコ良くて、人気がある」 → いわゆる「HERO」なので枚挙にいとまがない。


・条件の②③が欠けると
「強くて、カッコ良くて、人気が無い」 → このキャラが実に難しい。

人は強くてカッコ良いと、放っておいても勝手に人気が出てしまうものだが、そこを不断の努力によって不人気を維持しなければならないのだ。


アントニオ猪木を支えた「坂口征二」のように、大衆受けはしないが、「いぶし銀」の魅力によって玄人受けする職人タイプがこれだ。

f:id:kanehiro-sakae:20210603172757j:plain
総理、2Fばかり見ていると足元の小石につまずきますヨ~


菅総理はどうであろうか?
「力は有るが、人相が悪くて、人気が無い」ということは③が欠けたタイプ。

裸一貫、劣等感をバネにのし上がったコンプレックス内包型。

「限りなく黒に近い灰色」の無派閥・剛腕政治家なのだが、2F(二階)を気にしすぎて卑屈感が漂い人気薄。

ブラックヒーローと呼ぶには、どうも迫力不足だなぁ~ (´Д`)


今日の幸せ


とても気になる男がいる。


モンゴルの英雄「ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ」だ。

四股名を「朝青龍」と言った。


では、この朝青龍はどうだろうか?・・・「強くて、悪党ヅラで、人気者」
私見で恐縮だが、彼こそ三拍子揃った、完全無欠の「ブラックヒーロー」だったのだ。


遠い異国に出稼ぎに来た悪ガキが、角界の頂点「横綱」になってしまったが為、品格と言う名の下に、手枷・足枷をはめられ、その鋭かった角を矯められてしまった。


朝青龍はブラックヒーローゆえに、その一挙一動の全てが批判の的にされてしまったが、あの時代、彼以外に「圧倒的な気迫」を土俵で体現できる力士がいただろうか?


勝負への集中力ひとつ取っても、”品格の有る” 他の力士では足元にも及ばない。

f:id:kanehiro-sakae:20210603184207j:plain
勝負への執念、気迫がこの人の身上だった

腑抜けた日本人力士達よ!
悔しかったら、モンゴルへ単身出稼ぎに行って、「チャンピオン」になってみろ!


そして、「モンゴル相撲の横綱として品格が無い」と連日マスコミに追われる中、「気迫と集中力と圧倒的な力」で「25回の優勝」を勝ち取ってみろ!


品格なんて「都合の良い言葉」を使うのは、そんな対等な立場になったときに初めて許されるものであろう。


日本の角界を石もて追われた朝青龍であるが、断髪式では『私の体の中には二つの心臓がある。生んでくれたモンゴルと育ててくれた日本を愛している』と述べ、土俵に「別れのKiss」をして花道を後にした。

f:id:kanehiro-sakae:20210603172625j:plain
隆々たる筋肉の鎧をまとった「雲竜型土俵入り」は実に見事であった。

一人の外国人青年が異国の「国技」に挑戦し、その頂に立つまでに、いったい何十万回のテッポウを打ち、何十万回の四股を踏んだのだろうか?
どれだけの数、土俵を這い、どれだけの涙を流したのだろうか?


朝青龍は「角界の鬼っ子」だったかもしれないが、少なくとも私のハートは鷲づかみにされた。💛


角界を去る日 、『生まれ変わったら「大和魂」を持った「日本人」として横綱になりたい』 と語った言葉の中に、命がけで生きた世界を追われた男の「無念」と共に、今や忘れ去られた「日本男児」の姿を見た。


「ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ」よ、僕らは君を忘れない。

ありがとう。