本能の考察
月日は百代の過客にして行きかふ年もまた旅人なり
舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらえて老をむかふるものは
日々旅にして旅をすみかとす
古人も多く旅に死せるあり・・・。
言わずもがなだが、俳人松尾芭蕉が記した日本最古の紀行文「奥の細道」の序文である。
芭蕉の旅への憧憬や、狂おしいまでの渇望が、読み手の情動をも刺激する。
旅に出たい・・・。
なにも芭蕉だけがそう思った訳ではない。
「旅」は600万年前、アフリカ南部ボツワナで生まれた4匹の原人から脈々と受け継がれた「人類の本能」なのである。
本能は「海馬」という脳組織に刻まれるという。
海馬は外部から入ってきた「情報」を不要なものと、保管すべきものとに選別をする重要器官である。
移動を生業とする、タクシーの運転手さん等は「海馬が発達」するらしい。
「海馬が縮小」すると人は認知症を発症するのだという。
コロナ禍により、移動に制約を受け始めて14ヶ月が経過した。
ストレスに弱い海馬は、大きなダメージを受け縮小したに違いない。
私見で恐縮だが、このままでは全世界で認知症の発症リスクが、格段に高まる恐れがある。
何せ地球規模の移動制限は人類600万年の歴史上、初めての事である。
こ、これは大変だぞぉ~!
・・・ところで夕飯、食べたっけかなぁ~ (´Д`)
今日の幸せ
旅は人間だけの特権ではない。
先頃までスーパーの鮮魚コーナーを賑わせていた「ホタルイカ」や「桜エビ」は、月の満ち欠けにより海中を上下する。
垂直移動なので、さほどスケール感は無いが、これも立派な「旅」である。
やはり旅にはスケールの大きさを求めたいという諸兄の為に、クジラの研究で名高い、米国オレゴン州立大学の調査結果をお知らせしたい。
発表によると、北太平洋に生息する「コク鯨」が出産の為2万2500キロを移動したことが確認され、哺乳類の移動距離としては最長を記録したとのこと。
なんと、このコク鯨の一団は、ロシアのサハリン島付近から太平洋を横断し、米西海岸沿岸を経て、メキシコのバハにたどり着たらしい。
発表を受け、ギネス社もすぐに哺乳類の「旅の最長記録」として「認定」したとのことだが、認定書を渡せたかどうかは定かではない。
旅は人を元気にする。
心に傷を負ったとき、人は旅に出る。
日常から離れ、見知らぬ風景に驚き、見知らぬ人に癒され、そしてまた元気に日常に戻るのだ。
制限を受けず、自由に動けることが、どれほど幸せな事か。
マスクをせずに、人と会えることが、どれほど幸せな事か。
無くしてしまった今だから言える。
「自由」って素晴らしい。
もう一度、自由な日常を取り戻すために、今は少し我慢だ。
明日の幸せの為に、世界中の人々が今を頑張っている💛
ありがとう。
僕も頑張る ‼